■水質と味覚食品加工や調理加工では、水質によって味覚に差が生じる。なかでもシンプルな素材の味覚を引き出す調理、米飯や惣菜、豆腐、湯葉、麩、出汁の味覚は、軟水で調理するか硬水を使うかで違いがある。水質は、カルシウムとマグネシウムの総含有量で変わる。素材が持つ独特の甘みを引き出すには軟水が適しており、調理後の含水率が多くなるのは軟水が適し、ふっくらと仕上がる。炊飯や豆腐などが解りやすい例である。水の性質は、食材への浸透圧の違いから、味覚の差となって表れる。水に含まれるわずか10ppm~100ppmのカルシウム、マグネシウムの含有量が味覚の変化を作り出す。
■健康のためにトータルミネラルが低い水を飲む 65歳以上を高齢者と呼ぶ。日本の高齢者人口は約2234万人で、総人口に占める割合は17.7%だ。高齢者の人口比率が14%以上に達し、それが持続している社会を高齢社会と呼ぶから、日本はすでに高齢社会に突入している。そして、80歳以上の人口は494万人で、割合は3.9%だ。内訳は男性が31.9%、女性が68.1%となっている(2001年3月31日現在)。ただし、80歳以上の年齢層は第2次世界大戦で多くの戦死者を出しているから、この男女差がそのまま生命力の差とはならない可能性もある。 80歳以上の高齢者が人口の10%を超えている広島県の佐伯郡吉和村、山県郡加詐町・戸河内町、島根県の美濃郡匹見町、那賀郡弥栄村、そして徳島県勝浦郡上勝町の生活水の水質を、計測してきた。各戸に水道水が引かれていても、くらしの中で井戸水や沢の水を飲料水に利用している人びとが多い。塩素殺菌された水の臭いと味になじめないのだろう。 日々のくらしの中で利用する水の総イオン値は20~40ppm(1Lあたり20~40㎎)、カルシウムイオン値は10~30ppmと、いずれも低い。ナトリウムイオン値は低すぎて、計測できなかった。塩素イオンと硫酸イオンは、6町村すべてゼロ。完全な軟水であり、トータルミネラル(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム)が低いのには改めて驚いた。 これに対して、80歳以上の高齢者が人口の10%を超えている町村が存在しない東北地方では、主要河川の中流や支流でも次のようにカルシウムイオンが多い。たとえば岩手県盛岡市の北上川では八80~110ppm、秋田県大館市の米代川では60~80ppm、宮城県角田市の阿武隈川では70~100ppm、青森県八戸市の馬淵川では100~120ppmである。また、埼玉県南部を流れる入間川(荒川の支流)流域は、おおむ120ppm程度だった。このことからミネラルが豊富な水が健康によいといわれてきたが、疑間である。
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