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水を知る

柄杓で汲んだ水で手を洗い、そして柄杓の底に残った水を川へ還したという道元は、いくらでもあるような水でさえ粗末にせず大切にしていました。 その私たちが当たり前のように使っている水。今、水は様々な問題を抱えているのです。

水の汚染と健康被害

◆川の水の汚染とガンの地域性

■トリハロメタンとカルシウムイオンと肝脱ガンの因果関係
これまでも、肝臓ガンの発生に地域差があるという指摘は見られた。だが、その多くは、C型肝炎との関係(C型肝炎から肝硬変、さらには肝臓ガンへの移行)や、低温度(300~700度)の焼却灰から派生するダイオキシン類による影響として説明されている。これに対して、地域差の原因として重要なのは、トリハロメタンの含有量とカルシウムイオン値であると考えている。この二つは、飲料水の水源や浄水場によって地域差が大きいからである。

すでに述べたように、トリハロメタンは殺菌のために水道水に塩素を投入することによって発生する発ガン物質である。浄水場からの距離が遠いほど、トリハロメタンの含有量は多い。遠距離になると殺菌のための塩素濃度が高くなり、有機物との反応が増加するからである。10kmで3ppb(㎎/L)増えるとされている。
 カルシウムイオン値については、関東平野はじめ利根川水系から北の地域は高く、木曽川、長良川、淀川水系は低い。また、沖縄県には隆起サンゴ礁からつくられた土地が多く、1Lあたり300㎎以上と、牛乳に含まれる量と変わらないぐらい高い地域もある。一般に、水中に含まれるカルシウムイオンが高い地域は、肝臓ガンの死亡率は低い。
 そして、トリハロメタンが多く含まれ、カルシウムイオン値が低い地域では、明らかに肝臓ガンの死亡率が高い傾向がある。


■淀川へ依存する大阪府の飲料水
大阪府の水道は、淀川への依存度がきわめて高い。まず淀川水系について説明しよう。 淀川は琵琶湖の最南端を水源とし、上流部分は宇治川と呼ばれる。京都盆地の南部を西に流れる宇治川は、八幡市で京都府南部を流れる木津川、京都市西部を流れる桂川と合流して大阪湾に注ぐ。京都市街地東部を流れる鴨川は、市の南部で桂川に合流している。

 鴨川は下水処理が完備しており、下水処理水が合流する南部までの市街地では清流を保っている。しかし、桂川は上流の大堰川に日吉ダムが建設されてから水質が悪化した。 嵐山の清流は過去の話で、亀岡市の人口増加とも相まって川底に泥が堆積し、澱んだ河川になっている。かつては嵐山の渡月橋から鮎が飛び跳ねる姿が見られたが、現在では川底の石が見える日さえ少ない。木津川も上流にダムが建設されて水量が低下したうえ、宇治市・城陽市・京田辺市などの人口増加と下水処理の未整理により、汚染が進んだ。

京都市は古く明治時代に、産業振興や路面電車に必要であった発電のために、琵琶湖からトンネルを堀って、琵琶湖疎水を完成させた。その後、明治45(1912)年に水道水の供給が始まる。現在も100%琵琶湖の水を水道水に利用し、政令指定都市のなかで唯一、潤沢な水量を確保できている。明治時代の公共事業によって確保された水資源が、いまも効率よく利用されていると言えるだろう。
 ただし、水源周辺の環境は大きく変わった。水源にほど近い三井寺付近は、70年ごろまでは琵琶湖に生息する淡水魚のモロコが多く釣れたが、いまはその面影もない。当時の輝きを見るには、琵琶湖大橋よりもはるかに北、西岸の高島郡今津町あたりまで北上しなければならない。

大阪府のほぼ全域と、兵庫県では神戸市の六甲山の海側(神戸市の供給量の約75%で、阪神水道企業団から購入)までが、淀川の水を水道水に利用している。浄水場は上流から順に枚方市の村野浄水場、摂津市の三島浄水場、守口市の庭窪浄水場の3つである。淀川の取水口は、上流から順に枚方市の自己水源から始まり、大阪市、阪神水道事業団など流域9白治体のものがあり、柴島浄水場(大阪市東淀川区)の取水口が最下流である。


■大阪市の肝臓ガン死亡率は日本一高い

人口10万人あたりの肝臓ガン死亡者数が全国1位の大阪府、2位の福岡県では、当然ながらほとんどの市町村で全国平均より死亡者数が多い。とりわけ目につくのが大阪市で、132.5人。(下図参照)

chiikisei00.gifこの数字は、全国平均の72.26人の1.83倍である。24ある区に、全国平均以下は1つもない。もっとも少ないのは天王寺区で81.2人、もっとも多いのが浪速区で234人と、全国平均の実に3.24倍である(この両区は隣接している。なぜ、これほどの差が生じるのかについては、まだ決定的な原因をつかめていない)。

大阪市の水源は100%淀川に依存し、浄水場は上流から順に豊野浄水場(寝屋川市、取水口は15㎞上流の枚方市)、庭窪浄水場、柴島浄水場(取水口は東淀川区と摂津市)がある。大阪市の浄水場における総トリハロメタン値は、1Lあたり0.01㎎~0.011㎎である。これに対して淀川水系ではない神戸市の浄水場は一ヵ所を除いて0.004㎎~0.005五㎎と、1ケタ少ない。トータルな水質汚染を表す電気伝導率(単位マイクロジーメンス)は、大阪市が166~190で平均が176。神戸市の場合は1カ所を除いて大阪市の最低より低く、平均は150だ。

chiiki01.gif他都道府県から大阪府に引っ越してきた人びとが最初に気にするのは水質であるという。その水質の悪さ、水のまずさは、全国に知れ渡ってきた。昭和40~50年代はとくに塩素の臭いが強く、当時の水質検査の調査報告書を読むと苦情が多く掲載されている。


■原因は淀川の水質にあり
そこで、肝臓ガンと飲料水の水質の関係を調べてみた。 肝臓ガンに結びつきやすいB型肝炎、C型肝炎は、血液と経口からの感染によって起きる。大阪府全域に共通する経口物質は水道水である。府下の市町村では72.7%が淀川水系から水道水の供給を受けており、肝臓ガン死亡者数の分布と水源の相関関係は高いと孝えられる。
 
 淀川流域の市は上流から枚方市、高槻市、寝屋川市、摂津市、守口市、大阪市だ。このうち、50歳代以上の人口10万人あたり死亡者数(99年)が100人以下は摂津市と枚方市で、他は104.0~132.5人である。枚方市は大阪府内で最上流の位置に自主取水口をもっている。 一方、50歳代以上の人口10万人あたりの死亡者数が少ないのは奈良県との県境に位置する交野市(98年は43.5人と最小、99年は76.6人)、藤井寺市(98年は55.0人で3番目に少なく、99年は80.6人)、豊能郡豊能町(98年は64.0人、99年は51.3人で最小)などだ。大阪府平均の120.2人(98年)、115.7人(99年)と比べて明らかに低い。また、豊能町は大阪府の市町村のなかで唯一、98年も99年も全国平均より
少ない。

chiiki02.gif 交野市の場合、約50%が白己水源の地下水を利用している。藤井寺市は14%(02年8月現在)が自己水源であり、ここも地下水だ。豊能町は100%白己水源。そのうち約77%が、兵庫県大野山中に発して兵庫県と大阪府を流れる猪名川を水源とし、約23%を地下水から取り入れている。ここに、府営水道に多くを依存している市町や淀川から100%取水している大阪市との違いが見られる。白己水源の量が多く、淀川からの取水比率が少ないために、肝臓ガンの死亡者数が少ないと考えられるのだ。


■浄水場から遠い地域、下流ぽど肝臓ガンが増える
大阪府では南部に位置する市や町の死亡者数が淀川流域よりも概して多い。たとえば、泉南郡岬町・田尻町、泉大津市、和泉市、富田林市などは、大阪府の平均を相当に上回っている。大阪府営水道の三つの浄水場のうち約80%の供総能力をもつのは、枚方市の村野浄水場だ。ここから最南端の岬町までは約75㎞ある。10kmでトリハロメタンが3ppb増加するので、岬町までで22.5ppb増加している計算になる。浄水場から離れた地域に肝臓ガンが多い事実との相関関係を考えないわけにはいかない。

chiiki03.gif  実際、岬町の肝臓ガン死亡率は異常に高い。98年は22人、99年は14人が亡くなり、10万人あたりに直すと98年が246.5人、99年が156.8人である。この数字は全国平均の98年が3.45倍、99年が2.17倍だ。

また、琵琶湖・淀川に飲料水を依存している地域および隣接する滋賀県の50歳代以上の人口10万人あたり肝臓ガン死亡者数は、次のように、下流になるにつれて高くなっている。

滋賀県=50.4人
京都府=77.4人
京都市=80.8人
大阪府=115.7人
大阪市=132.5人

とはいえ、大阪市の三つの浄水場は、厚生労働省が設定する水質基準に違反しているわけではない。総トリハロメタン値は、水質基準値の1Lあたり0.1㎎以下である。さらに、日本より厳しいドイツの基準値0.025㎎もクリアしている(国内には、千葉県の柏井西断水場の0.033㎎や柏井東浄水場の0.029㎎のように、この基準を上回るケースもある)。

ここで重要なのは、トリハロメタン以外の原因があるのか、それとも基準を見直す必要があるのかだ。各地の水質と肝臓ガンの因果関係を調べた経験では、ドイツの基準値を取り入れるぺきではないかと考える。
大阪府は水質改善のために98年7月から,3つの浄水場で大型平面高度浄水施設を稼働させた。この施設はオゾンによって初期殺菌を行い、総トリハロメタン値を減少させる構造である。ただし、アルデヒド、ケトン、プロモホルムという化学物質の増加が懸念される。この3つも、肝臓ガンを引き起こす原因の1つだからである。総トリハロメタン値の減少に主眼を置いたというのが府の見解だが、住民の健康にどのような影響が現れるのか、5~6年間の経過を見なければならない。



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