このように、短期促成栽培では、まだ光合成が終わっていない早い時期に収穫する野菜が多く、それらは見かけだけは生長しているが、中身は光合成が充分にできていない未完成の野莱なのである。そのために窒素成分がタンパク質に変化せずに、高濃度の硝酸塩が検出されるのだ。また液肥を収穫直前に入れると亜硝酸塩濃度が高くなる傾向がある。特に関西から西の建地は液肥を利用することが多く、亜硝酸塩濃度の高い促成栽培の野菜が目立つ。一般に、高濃度の硝酸塩を含有する野莱は、収穫前の追肥によって収量が増す根莱、収穫前に曇天が多く降水量も多い時期の野莱である。食味を重要視する果莱、果実には極端に少ないのは当然である。瓜類は硝酸塩が多いとエグ味が増し、食味は低下する。もともと硝酸塩濃度が低い野菜は、果菜、タマネギ、ニンニク、バレイショ、サツマイモなどである。これらの野莱を一定の大きさに生長させるには栽培期間を短縮することが不可能であり、結果的に充分に光合成しているためである。それほど、野菜を栽培するには充分な光合成が大切なのである。光合成の足りない施設促成栽培の野菜が問題なのだから、施設栽培を減らして白然のサイクルで栽培された野菜を増やせばいいということになる。ところが、現実にはそうなっていないのだ。
■施設栽培は増える一方日本で施設栽培が増え始めたのは昭和40年代の後半、1970年ごろからである。日本各地で施設園芸が急速に増え、1997年6月時点の園芸用施設面積は52500haで世界一の面積だという。生産効率を上げるシステムとして農林水産省は施設園芸を推進し、助成も行ってきた。国として推進てきたのだからこれだけ増えるのも当然だ。昭和54年(1979)年ごろから、野菜の日持ちをよくするために低音で出荷する予冷システムが金国的に導入され始めた。特に野莱生産の中心である南日本の海岸地域でこのシステムは広まり、また高冷地にも野菜生産地が形成されるようになった。このように施設栽培が増えることで多くの野菜が周年栽培され、野菜の季節感が薄れ始めたのである。それまで冬野菜であったホウレンソウ、コマツナ、カブナ、中国野菜が1年中市場に出回るようになった。冬期に露地で育てるよりも3分の1以下の日数で栽培できるのだから、収益牲の高いビジネスとして発展したのもうなずける。マスコミも、効率のいい農業であると施設栽培を賞賛し、私が知る限り、疑問とする報道はほとんどない。農業生産の成功とされ、注目されてきた施設短期促成栽培。この栽培方法に大きな盲点があったことが、先の東京都のデータによって明らかになったわけである。にもかかわらず、都は積極的に生産者や消費者に警告を出していないのは、大間題ではないか。そればかりか毎年の検査品目の内容に一貫性がなく、明らかに無駄な果実の検査を行っている。都民の食生活の安全を目的とするならば、これまでのデータのなかから高濃度の葉野莱を集申的にピックアップして、季節、栽培形態、産地別に分類し継続的に検査すべきである。そうすることで正確に生産者と消費者に警告を発することができる。それなのに、これまでのデータはみすみす危険性のある青果物を見逃しているのだ。
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