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メタボリックシンドローム対策情報

◆講演:メタボリックシンドロームを改善するための食生活 / 山口静枝

先日、箕面市の小学校で食育活動をしていた時、小学生からも"メタボリック"という言葉がとびだしたほどで、今やこの言葉は広く認知されている。「死の四重奏」「サイレントキラー」「シンドロームX」などという表現の時はほとんど注目を集めていなかったことを思うと、肥満と生活習慣病との関連についての国民的関心を高めた意味は大きい。しかし、2000年に策定された「健康日本21」の数値目標をメタボリックシンドロームの改善に関連する「肥満者の割合」の項目でみると、策定時より約10%減少させて15%以下にという目標数値が中間評価報告書(2007.4.10)では29.0%という数値であった。肥満者の割合を減少させるどころか、策定時よりも5%の増加となっている。このままでは2010年までに目標数値の実現は絶望的であり、肥満対策の難しさを示唆している。

メタボリックシンドロームのベースにある内臓脂肪蓄積型の肥満の改善。これができれば、耐糖能異常や高血圧症、虚血性心疾患などの発症を軽減することができる。栄養・食生活の改善を図るため、厚生労働省・農林水産省は「何をどれだけ食べたら良いか」を示す「食事バランスガイド」を平成17年6月に作成・公表し、現在普及啓発活動を行っている。このような取り組みが国を挙げて国民の健康増進をすすめる大きな柱として位置づけられているのは、生活習慣病発症には栄養・食生活が大きく関与しているとの疫学的調査研究の成果によるものである。

わが国の「食事バランスガイド」は、コマの形で表現され、何をどれくらい食べたらよいかを提示している。この内容は日本人の食事パターンに合致しており、米・パン・パスタなど穀類の摂取に大きなウエイトが置かれている。以前のUSDAフードピラミッドと食材の組み合わせが類似している。また、これを策定した省庁に農林水産省が加わっているという点も米国と同じである。このような背景も踏まえて、健康日本21の中間評価の数値の意味するところを考えることも必要ではないか。

さて、平成16年度に「メタボリックシンドローム発症予防のための理想食の開発とその検証」というテーマで文科省の科研費を得た研究が今年の3月に終わる。本日はこの内容の一端を紹介します。
私は、食生活を見つめなおし、食生活を替えるためには、調理スキルを身につけることが重要であると考えている。それを実践する場として、料理教室を媒体とするダイエット教室の市民講座の開催、さらに健康になるための料理や食事法を教える料理教室(リハビリクッキング陽)を主宰してきた。市民講座で実践していたエネルギーの収支バランスに着目したダイエット法では、ある程度の減量は可能ではあるが、長期の継続は困難なことも多く、食生活そのものを変革させることには繋がりにくいことがわかった。そこで新たな料理教室では、食事を通して健康になるという観点から、食事の組み合わせパターンに着目した実践を行っていくうちに、タンパク質の摂取に注目すると減量がスムーズに進むことを見出した。「相対的高たんぱく質食ダイエット」と名づけたこの食事法を個人の食生活習慣や体格また検査値をふまえながら、肥満改善を目指す人には毎日の食事のとり方を指導し、メタボリックシンドロームを改善したい人には、その個人の体格に合わせたオーダーメイドの食事を提供してきた。いずれの場合も体重の減少、内臓脂肪量の減少、血液性状の改善が確認できた。そして何より空腹感が少ないため、長期間にわたっての継続が可能であり、食生活そのものを大きく変革させることができる食事法であるのではないかと考えた。

そしてこのダイエット法を研究する中で、磁性鍋との出会いがあった。私は、電子レンジを使用しての調理には積極的ではなかった。しかし、マイクロ波を遠赤外線の波長に転換することができる磁性鍋を使うこの新しい調理法は、私が展開しようとする食事法をサポートしてくれるものであった。この調理法の特徴は脂質の減少量の大きさにある。このことは、摂取エネルギー総量を抑えることからタンパク質摂取の割合を相対的に引き上げることに繋がる。そして、何よりも美味しく調理できることは大きな魅力である。このことは、遊離アミノ酸量の増加によっても確認された。

食生活の改善においては、これまでの食習慣を変え新しい食事法が習慣化されることが必要である。そのためには、いくつかの条件があると思われる。たとえば、取り入れやすい方法であること、今までの食習慣の延長上で少しの意識改革で出来ること、効果が確認できること、美味しくいただくことが出来ることなど。
本日提案するこの調理法は、これらの条件を満たしているのではないかと思われる。

いつでも、どこでも、好きな時に、好きなものを食べることができるという、恵まれたこの稀有な時代を生きている現代の日本人は、食事をどのようにとらえるべきかを、今、一人ひとりに、間われているのではないかと思う。

五木寛之の「人間の関係」という本に縄文時代の火焔縄文土器に関ずる一節があった。その箇所を引用する。『文化というものは、そもそも余暇から生みだされてくるものにほかなりません。食うため、生きるために命をすりへらしている暮らしからは、なかなか文化は育たないものです。それでは、古代東北の縄文土器のような創造的な美はどうなんだ、と、反論されるかもしれません。それは縄文期のその人びとの暮らしに人間的なゆとりがあり、おおらかな生命力が花開いていたことの証拠でしょう。あの火焔土器などのエネルギーは、決して奴隷的な生活のなかからは生まれてこないものです。』

私たちの体をつくる材料である食べものの命を大切にしたいものです。食べることを考えるとは、生きかた、暮らしかたを問いなおすことに繋がると思うからです。メタボリックシンドロームの改善は、現代人の暮らし方、生き方を見つめなおすことから始まると考える。


yamaguchi.jpg 山ロ静枝(やまぐちしずえ)
大阪青山大学准教授
1974年 大阪市立大学家政学部食物学科卒業
1974年 大阪信愛女学院短期大学勤務
1998年 大阪教育大学大学院健康科学部修士課程
2000年 大阪教育大学大学院健康科学部修士課程修了
2005年 大阪信愛女学院短期大学退職
2006年 大阪青山大学健康科学部勤務
現在に至る

 

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